由利島はなぜ無人島に?DASH島ロケ地の現在と上陸の真相を追う
日本テレビ系の長寿番組『ザ!鉄腕!DASH!!』の看板企画として、長年にわたり視聴者の冒険心を刺激し続けている「DASH島」。テレビ画面に広がる手つかずの砂浜や深い照葉樹林、そしてかつて人が暮らしていた痕跡を留める古い遺構の数々は、多くの人々を魅了してきました。その舞台となった孤島の正体が、瀬戸内海・伊予灘に浮かぶ愛媛県松山市の無人島「由利島(ゆりじま)」であることは、ファンの間でも公然の事実として知られています。
しかし、画面に映し出される開拓ロマンの裏側で、この島が「なぜ無人島になったのか」、そして「現在はどのような姿をとどめているのか」という歴史的経緯や実態は、意外なほど深く知られていません。ネット上では「自由に上陸してキャンプができるのか」「島ごとテレビ局が買い取ったのか」といった憶測も飛び交っています。本稿では、地元自治体の記録や歴史資料、海運関係者への聞き取りをもとに、由利島の歴史的変遷、廃墟が語る過去、所有権と上陸規制の法的真実、そして2026年時点の最新状況までを徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:由利島は愛媛県松山市(忽那諸島)に属する無人島で、番組「DASH島」のロケ地として知られるが、かつてはイワシ漁の拠点として最盛期に数百人が定住していた。
- 要点2:無人島化した直接の理由は、昭和30年代後半以降のイワシ漁の不振、深刻な飲料水不足、そして高度経済成長期の都市部移住による急速な過疎化(1965年に最後の住民が離島)。
- 要点3:島内は複数の民間人や自治体が権利を持つ私有地であり、定期船はなく港湾も崩壊しているため、一般人の無断上陸は不法侵入や遭難の危険から厳しく制限・自粛要請されている。
【DASH島ロケ地の真相】愛媛県松山市沖に浮かぶ「由利島」の地理的プロファイル
瀬戸内海の西部に広がる伊予灘。松山市中心部から北西へ約35km、忽那諸島(くつなしょとう)の最南端に位置する孤島が由利島です。行政区分としては愛媛県松山市(旧温泉郡中島町)に属し、周囲約4.5km、面積約0.38平方キロメートルの小規模な島です。
地形は極めて特徴的で、東側の「大由利(本島)」と西側の「小由利」という2つの山塊が、細長い砂嘴(さし)で結ばれた「陸繋島(りくけいとう)」の構造を持っています。この砂嘴の部分が、テレビで城島茂氏らが浜辺を開拓し、トロッコ用レールや舟屋を設置したメイン作業エリアの原型となっています。
番組開始当初、番組側は「瀬戸内海某所の無人島」として具体的な島名を伏せていましたが、放送開始直後から海上保安庁の航海図や国土地理院の空中写真、特徴的な地形の合致からネット上で特定作業が進みました。さらに、地元・中島地区の住民による目撃情報や、愛媛県内の港湾関係者の証言が重なり、「DASH島=由利島」というロケ地の真相は広く共有されるに至りました。現在では松山市の観光情報や地域史の文脈においても、番組名を直接出さずとも「全国的に知られる開拓番組の舞台」として認知されています。

【なぜ無人島になったのか】由利島の歴史と1960年代に住民が消えた決定的な理由
現在でこそ静寂に包まれる由利島ですが、かつては瀬戸内有数の活気にあふれた有人島でした。島に残る石垣や木造建築の基礎は、単なるテレビのセットではなく、かつてここで営まれていた人間の生活の確固たる痕跡です。
歴史資料によると、由利島に人が定住し始めたのは江戸時代後期から明治初期にかけてとされています。周辺海域がカタクチイワシ(煮干しの原料)の豊かな漁場であったことから、対岸の睦月島(むづきじま)などから漁業従事者が移住しました。最盛期を迎えた昭和初期から戦後直後にかけては、煮干しイワシの加工場が立ち並び、網元や漁労者、その家族を含めて数十世帯・100人以上が常住し、季節工の出稼ぎを含めると数百人規模がひしめく熱気にあふれていました。島内には睦月小学校の分校が置かれ、子供たちの声が響いていた時期もあったのです。
栄華を極めた由利島が、なぜ完全な無人島へと転落してしまったのか。調査によって浮かび上がるのは、離島が直面する過酷な構造的要因です。
- 漁業環境の激変と不漁:1955年代(昭和30年代)に入ると、瀬戸内海のイワシ回遊ルートが変化し、水揚高が急激に激減。島の基幹産業そのものが壊滅的な打撃を受けました。
- 慢性的な水不足:由利島には大きな河川がなく、生活用水のすべてを天水(雨水)と浅い井戸に依存していました。旱魃(かんばつ)のたびに水質が悪化し、衛生環境の維持が限界に達しました。
- 高度経済成長と教育・医療の壁:本州や四国本土が高度成長期を迎えるなか、電気や水道、医療インフラが未整備の島での生活は過酷を極めました。中学校進学を機に家族単位で島を離れる動きが加速します。
住民の流出は食い止められず、1965年(昭和40年)前後に最後の島民が島を離れ、由利島は名実ともに完全な無人島となりました。過疎化の波と産業の衰退が、わずか数十年で集落を消滅させたのです。
【客観データ比較】由利島の基本諸元と忽那諸島・国内主要無人島との比較検証
全国の有名な無人島と比較することで、由利島が置かれている特殊な立地環境や管理状況がより明確になります。以下の比較表にその実態を整理しました。
| 島名・所在地 | 面積・無人島化した時期 | 所有関係・管理主体 | 上陸の可否・観光ルート |
|---|---|---|---|
| 由利島 (愛媛県松山市) | 約0.38km² 1965年前後に無人化 | 松山市有地および 複数の民間人による私有地 | 一般上陸不可 (定期航路なし・港湾崩壊・立入自粛) |
| 端島(軍艦島) (長崎県長崎市) | 約0.063km² 1974年に無人化 | 長崎市が島全体を所有 (世界文化遺産) | 条件付き上陸可 (許可事業者の観光ツアー・見学通路のみ) |
| 友ヶ島(沖ノ島) (和歌山県和歌山市) | 約1.33km² 戦後無人化(砲台跡) | 和歌山市・国有地等 (瀬戸内海国立公園) | 自由上陸可 (加太港より定期船が毎日運航) |
| 猿島 (神奈川県横須賀市) | 約0.055km² 戦後公園化 | 横須賀市(国からの無償譲渡等) 指定管理者が運営 | 観光上陸可 (三笠桟橋より定期船・BBQ施設あり) |
観光資源として定期船が整備されている友ヶ島や猿島とは異なり、由利島はインフラが完全に途絶えた「放置無人島」の区分に入ります。観光地化された島と同一視して訪問を計画することは、極めて非現実的かつ危険であることがデータからも分かります。

【実態検証】由利島の現在と残された廃墟|テレビ画面の裏側にある現場のリアル
無人化から半世紀以上が経過した由利島の現在は、どのような景観を呈しているのでしょうか。近隣海域を航行する地元漁業者や、海上保安部の巡視記録などから現場の実態を検証します。
島内には今なお、昭和の漁村コミュニティを偲ばせる廃墟が多数眠っています。鬱蒼と茂る照葉樹や竹林の合間には、かつての加工場の基礎コンクリート、崩壊した木造民家の屋根瓦、石積みの段々畑の跡、錆びついた手押し井戸のポンプが点在しています。睦月小学校分校の跡地とされる場所も、自然の猛烈な侵食を受け、建物の躯体は朽ち果てて緑に飲み込まれています。
一方、番組企画によって建設された「舟屋」や「反射炉」「水路」「木製クレーン」などの設備群について、現場を定期的に遠望する遊漁船船長は次のように語ります。
「テレビで見ると立派に見える工作物も、瀬戸内の潮風と毎年の台風、冬の季節風に晒され続けているため、常に手入れをしなければ数年であっという間に朽ちてしまいます。番組スタッフが定期的に入って補修や安全点検を行っているからこそ維持できているのであって、自然のまま放置すればあっという間にただの瓦礫に戻るほど、海の環境は厳しいものです」
島内にはマムシなどの有毒生物が生息しているほか、急峻な斜面は地盤が脆く、落石や土砂崩れのリスクを常に孕んでいます。テレビの画面に映る牧歌的な空気とは裏腹に、現地の自然環境は人間の安易な立ち入りを拒む過酷さを保ち続けています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|上陸・行き方・所有権を巡る法的リスク
インターネット上では、由利島に関して多くの誤認や憶測が一人歩きしています。トラブルに巻き込まれないために、ここで3つの大きな誤解を正しておかなければなりません。
誤解1:テレビ局が無人島を丸ごと買い取った?
「日本テレビが島を数十億円で購入した」という噂がネット掲示板などで散見されますが、これは事実ではありません。不動産登記や自治体の固定資産管理の実態に基づくと、由利島の所有者は単一ではなく、旧島民の遺族や本土在住の相続人など「複数の民間人が持つ私有地」と「松山市の公有地」が複雑に入り組んだ状態になっています。テレビ局側は島を購入したのではなく、土地所有者や地元漁業協同組合、自治体と厳格な利用協定および賃貸借契約を交わした上で、撮影と開拓を行っているに過ぎません。
誤解2:チャーター船やカヤックを使えば自由に上陸できる?
最も危険な誤解が「由利島への行き方と上陸」に関する認識です。由利島へ向かう定期船・フェリーは一切存在しません。そのため「プレジャーボートやシーカヤックで自力上陸できるのではないか」と考える人が後を絶ちませんが、以下の重大な問題があります。
- 接岸設備の壊滅:かつての桟橋は崩落・流失しており、浅瀬には暗礁が点在しています。不用意に近づけば船底を破損して座礁する危険が極めて高いです。
- 法的責任(不法侵入・住居侵入罪):前述のとおり島内全域が私有地および行政管理地です。権利者の許可なく足を踏み入れれば、刑法第130条(住居侵入・建造物侵入)や軽犯罪法に抵触する恐れがあります。
- 漁業権との抵触:島周辺の海域には地元漁協の共同漁業権が設定されており、無断での停泊やアワビ・サザエ等の採取は厳禁です。密漁対策のため、地元漁民や海上保安庁が目を光らせています。
松山市や関係当局も、遭難事故防止および私有地保全の観点から、一般人の無許可上陸に対して強い自粛要請と警告を発しています。「映え」や好奇心から無断で上陸することは、絶対に避けるべき行為です。

【ネットの反応と社会的反響】熱狂と聖地巡礼がもたらした光と影
SNSやネット掲示板における由利島に関するネットの反応を分析すると、番組開始から現在に至るまで、視聴者の関心構造が変化していることが見て取れます。
企画初期は「本当に人がいない島で作っているのか」「場所はどこなのか」といった特定欲求やエンタメとしての驚きが中心でした。しかし年月が経つにつれ、5chや知恵袋などでは「廃墟マニアによる上陸指南」や「無断で近づいたボートが追い返された」といったトラブル絡みの書き込みが目立つようになりました。一方で、「失われゆく日本の原風景や離島の過疎問題を考えるきっかけになった」「昔の人がどれだけ過酷な開拓をしていたかが分かる」といった、歴史的・民俗学的な価値に敬意を払う声も確実に増えています。
【プロの結論】メディア観光の功罪と離島保全から見出すべき教訓
メディアが特定の地域を舞台に壮大な物語を描く「メディア・ツーリズム」は、人々の関心を呼び覚ます大きな力を持ちます。しかし由利島の事例が投げかける教訓は、「映像のロマン」と「現実の国土保全」の境界線を峻別しなければならないという点です。
かつて過酷な生活苦と水不足によって島を追われた旧住民の歴史があるからこそ、今日の無人島が存在しています。テレビ番組はその過酷さを追体験するエンターテインメントとして成立していますが、安全管理のバックアップや資本力を持たない一般人がその真似事をすることは、単なる無謀なリスクテイクに過ぎません。
【向いている楽しみ方・おすすめできない行動基準】
- 推奨される向き合い方:テレビ画面を通じて先人の知恵や開拓の難しさを学ぶ。どうしても現地を体感したい場合は、中島地区などの有人島を訪れる正規のフェリー航路の船上から、または合法的な周辺周遊クルーズを利用して「海の上から遠望する」にとどめる。
- 絶対に避けるべき人:「SNSのネタ作りのために無断上陸を企てる人」「キャンプ場感覚で無人島生活を試みようとする人」「漁協や地元自治体のルールを軽視する人」。これらは地域への迷惑行為であるだけでなく、命に関わる遭難事故に直結します。
【由利島】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:一般人が由利島に上陸して観光することは可能ですか?
A1:原則として不可能です。由利島への定期航路は存在せず、島内は松山市および複数の民間人が所有する私有地です。港湾設備も崩落しており危険なため、一般人の無断上陸は禁止・自粛要請されています。許可のない立ち入りは法的処罰(不法侵入等)の対象となります。
Q2:由利島の現在の所有者は日本テレビですか?
A2:いいえ、テレビ局が島を購入したわけではありません。島の土地は、かつて暮らしていた旧島民の遺族ら複数の民間地権者と、松山市有地が混在しています。番組の制作にあたっては、地権者や地元自治体、漁協などと正式に利用協定を結んで撮影が行われています。
Q3:由利島の姿を合法的に見るにはどのような行き方がありますか?
A3:松山港(三津浜港や高浜港)から中島方面へ向かう定期フェリーに乗船すると、航路の途中で遠方に由利島を望むことができます。また、松山市や今治市のマリーナが主催する瀬戸内海の周遊クルーズ(海上からの景観鑑賞)を利用し、海上からその独特のひょうたん型の地形を眺めるのが、最も安全で法的に問題のない鑑賞方法です。
まとめ:メディアが生んだ無人島ロマンの向こう側にある歴史と教訓
テレビ番組「DASH島」のロケ地として一躍脚光を浴びた愛媛県松山市の由利島。その砂浜と豊かな原生林の奥には、明治から昭和にかけてイワシ漁に命を懸けた漁民たちの汗と涙の生活史が刻まれています。水不足と過疎化の荒波に呑まれ、1965年に住民が去ったという厳然たる事実は、離島が抱える構造的な脆弱性を今に伝える貴重な教訓です。
現在、テレビ制作陣の手によって息を吹き返しているように見えるこの島も、実態は自然の侵食と背中合わせの脆いバランスの上に成り立っています。私有地としての法的境界、そして荒海に囲まれた自然の厳しさを正しく認識し、画面越しのロマンを楽しみつつも、現実の島に対しては静かな敬意を払うことこそが、現代を生きる私たちに求められる最も成熟した態度と言えるでしょう。 (出典: 由利島(Yahoo!ニュース))